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「がむしゃらに生きた3年間」須坂市地域おこし協力隊を振り返る~早川航紀元隊員(現:須坂市地域おこし協議会会長)

須坂市仕事

3年間大変お世話になりました、これからもよろしくお願いします

2021年7月末で3年間の須坂市地域おこし協力隊の任期が終了しました。 
3年間の振り返りと任期後の活動について報告します。

 

始まり

2017年、私は新卒から採用いただいていた長野県に本社がある食品メーカーの営業として東京支店に勤務していました。平成の大合併で長野県から岐阜県に越県合併してしまった地域で育った私は長野県に対して特別な思いを抱いており、「長野」「食」「地域」に携われる仕事で長野県に貢献したいという目標をもって社会に出ました。
初めての社会人経験で多くのことを学ばせてもらい、がむしゃらに仕事に打ち込んできましたが、ある日通っていた飲み屋のマスターに「目標に向けて進めているの?」と聞かれ、去年の今頃と何も状況が変わっていないことにハッとさせられました。

 

移住という選択肢

「長野」「食」「地域」に携わりたいという目的を叶えるのに今では2拠点生活やオンラインでの関わり方などの選択肢もありますが、当時の自分の中では「とりあえず長野に移住する」という選択肢しか考えつきませんでした。東京で開催されていた長野県の自治体が集まる移住相談セミナー、銀座NAGANOで定期的に開催されていた移住相談会に参加しました。
安曇野市、高山村、飯綱町、須坂市に候補を絞り、情報収集し移住のイメージを膨らませました。

 

須坂市という選択肢

2018年1月頃、妻(当時は結婚前)に長野移住の想いを伝え、どうせなら一番過酷な冬に各候補地を見て回ろうと車で旅行しました。ちょうど結構な雪が降り、2輪駆動の軽自動車を運転していた妻がトラウマになり、飯綱町と高山村は選択肢からはずれました。その後、東京での移住相談の際にタイミングよく須坂市の信州須坂移住支援チームの方と連続してお会いできて話が聞けたこと、大学時代に活動していた農業サークルで須坂市の農家さんにお世話になっていたことがあり、少し土地勘があったこと、今後の仕事において東京圏との交通の便が良いことなど総合的に考慮し、移住先を須坂市に決めました。
 

地域おこし協力隊という選択肢

移住先を決めると同じくらいに大きく悩んだことは仕事でした。長野でやりたいことは山ほどあり、当時は特に自伐型林業、農業、地域食材の卸売などをやりたいと思っていましたが、新卒でサラリーマン経験しかない自身にとって起業は非常にリスキーで一歩踏み出す勇気がありませんでした。そんな中、信州須坂移住支援チームの方に勧めていただいたのが「地域おこし協力隊」という制度でした。3年間という限られた任期で、待遇も考えるところはありましたが、「長野」「食」「地域」という目標に携わるには最適な制度であり、3年間を死に物狂いで頑張ればその後のことは何とでも形にできるだろうという想いで応募を決めました。
 

活動拠点は「須坂温泉古城荘」

協力隊の募集の中で決めたのは須坂温泉古城荘でした。食と長野の魅力を発信できそうな場所であったこと、今後直売所を設立する計画があって地域農業に関われそうなこと、運営事業者やスタッフの方に魅力を感じたこともあり、決断に踏み切りました。
須坂温泉は先述の農業サークルの実習で農作業後に温泉を利用していたこともあり、愛着があったという理由も大きかったです。
【須坂温泉古城荘公式HP】
https://kojousou.co.jp/

 

移住、新生活の始まり

地域おこし協力隊の任期は2018年8月1日からではありましたが、春頃には東京で仕事をしながら定期的に須坂に赴き、住居を決めて車を購入し、生活基盤を整え始めました。
ありがちですが、地方移住をするなら古民家に住みたいと思って相談していたところ、活動拠点の須坂温泉から徒歩5分程の好立地に庭付き畑付きの築100年近い立派な物件をご紹介いただけました。即答で借りたい旨を伝え大家さんにお願いに行きました。
住居も決まり、古民家の掃除などもあったので7月中旬には須坂市に引っ越しました。
大学時代から8年間住んだ東京で最後に行きたいところはあるかと友人に聞かれ、東京で一番好きだった柴又に行き、帝釈天でお参りし、決意を新たに長野に発ったのを覚えています。

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【人生初の自家用車を須坂で購入】

 

がむしゃらに生きた一年目、温泉業務とハクビシン退治

8月1日からの活動に全力で取り組めるよう、7月の間アルバイトとして須坂温泉の業務に就きました。須坂温泉は日帰り温泉、宿泊旅館だけでなく、合宿施設として関東近郊のスポーツ団体を受け入れており、ちょうど夏休みの合宿シーズンで超繁忙期に業務に加わったので、早朝の準備から夕食の片付けまで身を粉にして働きました。携帯の万歩計機能で計測したら一日中同じ施設の中にいるのに24,078歩を記録した日もありました。

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【古城荘の一員として活動】
https://www.city.suzaka.nagano.jp/kurasuzaka/talk.php?id=237

 

夏の合宿、秋の行楽、冬の合宿、冬の忘年会、正月と終わることのない繁忙期を体験し、旅館業のいろはを経験しました。
へとへとになって帰宅し床に就こうとすると古民家に住み着いたハクビシンが天井裏で活動をはじめ、安眠できないという修行のような日々でした。活動が休みの日には古民家の片付け、ハクビシン退治と対策、DIYによる修繕と、手探りで直面している問題をひとつずつ片付けてきました。温泉施設という場所柄、多くの地域内外の方々と関わることが多く、また住居の古民家の大家さんは地域活動を精力的におこなっている方で、わからないことを相談し、教えてもらいながら自然に地域の方々との関係性が築けていったように感じます。

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【ハクビシン退治に古民家の屋根裏へ】

 

この時期の地域おこし協力隊の活動は旅館業に集中といった状態が続いた為、業務内外問わず、地域の行事やイベントなどにも積極的に参加させてもらいました。普願寺の妖怪夜会でお化けになったり、須坂市のスムージーコンテストに応募したら運よく準グランプリに選ばれ、須坂温泉の正月の朝食にスムージーを提供したり、思い返すと本当に色々な体験をさせていただきました。

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【スムージーコンテストで入賞したレシピを提供】

また3年後を見据えて農家さんにお願いし、農作業を教えてもらったり、自伐型林業の研修に通ったり、長野県内で活動する他の地区の地域おこし協力隊と情報交換を行ったりと任期終了後の自分の在り方について自問自答を繰り返し続けてきました。
 

方向性を絞った2年目、地方生活と大学生活

1年目に交流会で出会った長野市の地域おこし協力隊が信州産ソルガムという作物で地域循環型社会をつくるという壮大な活動をしていることを聞き、とても興味を持ちました。「長野」「食」「地域」という目標キーワードが全部当てはまるこのプロジェクトの話を聞いて調べているうちに、須坂市も信州産ソルガムプロジェクトに対して連携中枢都市圏として関わっていることがわかりました。私は人生で初めて自分の畑を借りて、たった10㌃ではありますが、本格的に農業にチャレンジしてみました。そして信州産ソルガムについて深く関わるにつれて、いつしか長野市の地域おこし協力隊の仲間と「信州産ソルガム普及促進協会」という組織を設立することになりました。

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【初めて借りた畑で育てたソルガム】

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【信州産ソルガム普及促進協会HP】
信州産ソルガム/アレルゲンフリー・グルテンフリー 信州産ソルガム普及促進協会/長野市
https://www.sorghum-nagano.com/

 

またこの年には信州大学の「ながのブランド郷土食」社会人スキルアップコースを1年間受講することになり、須坂温泉での地域おこし協力隊の活動を行いながら、大学に通い、長野県産食材の活用事例や、加工方法について学びました。
2年目には自家用車に軽トラを購入しました。畑を初めて地域の有害鳥獣駆除活動をはじるに必需品となりました。新しい土地での生活にも慣れてきて、住居がある大谷町の花の会での環境美化活動や体育部員になるなど、東京では考えられなかった町の自治活動にも参加することができました。

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【須坂市猟友会として有害鳥獣駆除活動に従事】

 

須坂温泉古城荘には農家チャレンジショップ整備事業で設営した小さな直売所が完成しました。多くの地元の農家さんや、事業者の方に協力いただき、何とかオープンすることができました。

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【農家チャレンジショップ「須坂まるかじり市」の様子】

 

この年の10月に大災害となった台風19号が直撃、温泉でも避難された方への浴場利用や宿泊棟の利用などの対応を行いましたが、これまでの人生で大きな災害に直面したことがなかった為、非常にショッキングな経験になりました。

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【田中果樹園の田中さんと被災した某会社へ炊き出し 】

 

地域おこし協力隊2年目の年越しも昨年同様、須坂温泉古城荘でお客様をお出迎えしました。この年の正月は冷蔵貯蔵のシャインマスカットを仕入れさせていただき、目玉商品としてたくさんのお客様に喜んでいただきました。

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【古城荘限定 正月パックの販売の様子】

 

独立に向けた3年目、起業と開墾と地域おこし協議会の設立

地域おこし協力隊3年目、最後の年となり、1年後の独立に向けて本格的に準備を進め、何とか無事に卒業することができました。
注力してきた信州産ソルガム普及促進協会のメンバーと信州産ソルガムを中心にグルテンフリー食材や、長野県の厳選食材を取り扱う「AKEBONO株式会社」を設立しました。前年から1年間通ったながのブランド郷土食社会人スキルアップコースも無事終了し、そこでのご縁や多くの方々のご支援を受けて信州大学発ベンチャー企業として認定をいただくこともできました。

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【AKEBONO通販サイト】
信州産ソルガム・グルテンフリー食品を中心とした自然食品通販
http://akebono-shop.com/

 

2年目の冬から須坂市内の畑のりんごの木の伐木から始まり、杉の木の伐木、庭木の伐木などの経験を培いました。また専門的な特殊伐採のスキルを身につける為に須坂温泉敷地内にある杉林の手入れも兼ねて修行を積みました。自伐型林業モデルを須坂市で実践するという目標には間に合わなかったものの、特殊伐採(アーボリスト、空師)のスキルを習得し、個人事業主ではありますが「こだま山商」という屋号をもって仕事として木を切れるようになりました。これらの活動の中で搬出された木々を薪として加工販売し、大切な資源である森林の地産地消も今後展開予定です。

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【こだま山商HP】
特殊伐採・薪販売・キャンプ場運営
http://kodama-forest-workers-nagano.com/

 

3年間関わってきた須坂温泉や地元地域との繋がりを任期後も残したいと思い、森林整備をおこなっていた須坂温泉古城荘内の山の神神社付近の敷地エリアにキャンプ場を設営することになりました。隙間時間に少しずつ枝打ちを行い、バックホーで開拓し、時には地元の方々のお力もお借りしながら、2021年8月にほぼ地域おこし協力隊の卒業と同時に「須坂温泉山の神キャンプ場」をオープンすることができました。
地域おこし協力隊としての任期後も引き続き、須坂温泉古城荘と共に地域を盛り上げていきたいです。

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【山の神キャンプ場整備の様子と完成した写真】

 

3年間お借りしていた古民家は現役協力隊の手によって今シェアハウスに生まれ変わりました!色々なご縁が形を変えて結びついていくんだなとしみじみ思います。
地域おこし協力隊の3年間は長いようであっという間に過ぎていきました。「地域貢献」「地域を盛り上げる」などと想いを抱いていてもこうして振り返ると地域おこし協力隊の制度目的である「定住」と「地域起業」をなんとか達成することが精いっぱいでした。多くの地域の方々のお陰様で今後も須坂市に住むことができているという感謝を持ち続け、むしろこれからすることで私なりの地域への恩返し、「地域おこし」をしたいと決意しております。

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【地域の先輩方と時々地域づくりの作戦会議をしています】

 

その一つの手段として同時期に須坂市地域おこし協力隊として活動し、卒業した隊員と「地域おこし協議会」という組織を設立しました。この組織は地域おこし協力隊は地域に馴染むのに1年間、実質の活動はその後の2年間しかないという自身や他の協力隊の反省をもとに卒業した協力隊員がバックアップし、現役の協力隊員や地域にとってより密度の濃い3年間の活動を行ってもらいたいという目的で誕生しました。
2021年8月から実際に新しい地域おこし協力隊が就任し、活動しています。
須坂市にはたくさんの魅力と未だ活用できていない多くの資源があります。こうした未活用なものに目を向けて持続的に地域産業を盛り上げていきたいと思います。3年間お世話になった市長をはじめ市役所職員の皆様、須坂温泉古城荘の皆様、日滝地域の皆様、そして市民の方々に改めて感謝申し上げます。
3年間本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします!

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【3年間で地方でも暮らせる力強さを身に着けることができました】

 

2021年8月より須坂市地域おこし協議会が2名の地域おこし協力隊を迎えて始動!
応援どうぞよろしくお願いします!


※↓画像をクリックすると「須坂市地域おこし協議会」の取り組みをご覧いただけます
協議会
 

(元須坂市地域おこし協力隊・須坂市地域おこし協議会会長 早川航紀)



掲載者及びお問合せ先【須坂市

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